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[発生研セミナー] 2/20 16:00~ 京都大 大串雅俊先生

2018.02.08 ●セミナー

第330回 発生研セミナー

 

 

ヒトES細胞からの栄養外胚葉様細胞分化の解析

 

大串 雅俊 准教授

京都大学 ウイルス・再生医科学研究所 発生システム制御分野

 

日時:平成30年2月20日(火)16:00~17:00
場所:発生医学研究所 1階カンファレンス室

 

 

多細胞生物の発生過程や分子基盤は、生物種に応じた多様性が知られている。哺乳類生物に関しては主にマウスをモデル生物とした研究が先行し、ヒトを含む他の哺乳類も基本的にマウスに準ずるだろうという考え方が主流だった。ところが近年、いろいろな発生現象がマウスと霊長類で必ずしも対応しないことが明らかになりつつあり1)、マウス研究で確立した知見をそのままヒトに当てはめてよいのかという問題が大きなトピックとなってきている。
私たちは、ヒトES細胞に特徴的な細胞分化現象として、栄養外胚葉系譜への分化に注目している。マウスの場合、胚盤胞内の多能性組織(内部細胞塊:ICM)由来の細胞株であるES細胞は、特殊な遺伝子操作を施さない限り栄養外胚葉系譜の細胞を生むことがない2)。ところが、同じくICMより樹立された細胞株であるにも拘らず、ヒトES細胞はBMPシグナルを与えるだけで比較的容易に栄養外胚葉や胎盤の特長を示す細胞へと分化することが報告されている3)。この現象はマウス発生学からは極めて考えにくいものであったため、様々な議論が繰り広げられているが4)、未だ決着を見ていない。最近、私たちは、栄養外胚葉様の細胞へと高効率に分化誘導できる新規培養条件を見いだしており、現在その細胞分化プロセスの詳細やこの現象の生物学的意義について検討・解析を進めている。本セミナーでは、この研究に関する最近の進展を、未発表データを含めて紹介したい。

 

参考文献
1) Boroviak T & Nichols J, Development 144: 175-186 (2017)
2) Niwa H et al. Cell 123: 917-929 (2005)
3) Xu RH et al. Nat Biotechnol 30: 1261-1264 (2002)
4) Robert RM et al. Reproduction, 147: D1-12 (2014)

 

 

大串先生は、平成29年度発生医学研究所共同研究課題に採択されております。

 

連絡先:発生医学研究所 多能性幹細胞分野 丹羽仁史 (内線6620)