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[発生研セミナー] 10月19日16:00~ 遺伝研 齋藤都暁先生

2017.10.10 ●セミナー

第319回発生研セミナー

 

小さなRNAによるゲノム防衛システム

 

教授 齋藤 都暁博士
情報・システム研究機構 国立遺伝学研究所

 

日 時: 平成29年 10月19日(木)16:00~17:00
場 所: 発生医学研究所 1階カンファレンス室

 

 

真核生物はレトロトランスポゾンの無秩序増殖の脅威から自己防衛しつつ、ゲノムサイズの増大を果たしてきた。すなわち、真核生物はレトロトランスポゾン配列を特異的に認識し、抑制する分子とメカニズムを保持していると言える。
我々はモデル動物ショウジョウバエにおいて、PIWIサブファミリー蛋白質群(Piwi、Aubergine、AGO3)の機能解明を行ってきた。その過程でPiwi-interacting RNA (piRNA)と呼ばれる小分子RNA群を発見した。配列解析の結果、その多くがレトロトランスポゾンmRNAに対してアンチセンス鎖であることを見出した。PIWIの発現やpiRNA生合成を阻害すると、レトロトランスポゾンの発現上昇が引き起こされることから、piRNAは抑制を受けるレトロトランスポゾンの断片化された配列情報である、と言える。PIWIサブファミリー蛋白質群及びpiRNAの機能解明を進めた結果、PIWI-piRNA複合体は転写レベル、もしくは転写後レベルでレトロトランスポゾンの発現を抑制すること、そしてこの抑制機構を支える分子機構の存在が明らかとなった。本セミナーではpiRNAによる転写後レベル、転写レベル双方のレトロトランスポゾン抑制機構を紹介し、小分子RNAによるゲノム防衛メカニズムについて議論したい。

 

参考文献:
1. Gunawardane et al. A slicer-mediated mechanism for repeat-associated siRNA 5′ end formation in Drosophila. Science 315: 1587-1590 (2007)
2. Iwasaki et al. Piwi modulates chromatin accessibility by regulating multiple factors including histone H1 to represss transposons. Molecular Cell, 63: 408-419 (2016)

 

 

連絡先 染色体制御分野 石黒 啓一郎 (内線6606)