イベント&セミナー

[発生研セミナー]1月17日17:00~東北大 奥村正樹先生

2017.01.12 ●セミナー

第290回発生研セミナー

 

奥村 正樹 博士
東北大学多元物質科学研究所

 

高速AFMが明らかにしたPDI酵素による基質の
酸化的フォールディング触媒機構の解明

 

【セミナーは日本語です/This seminar will be presented in Japanese】

 

日時:平成29年1月17日(火)17:00~18:00
場所:発生医学研究所1階カンファレンス室

 

細胞内小器官の1つ小胞体は他の細胞内小器官に比べ酸化的な環境にあり、タンパク質内のシステイン残基間でジスルフィド結合の化学反応が進行することでタンパク質の立体構造形成(フォールディング)を完結する。小胞体で合成されるタンパク質の約1/3はジスルフィド結合の形成を伴う酸化的フォールディングを受けると言われており、生物学的にも医学的にも重要な免疫グロブリンやインスリンなどが知られている。従来、酸化的フォールディングを触媒する酵素は主にProtein Disulfide Isomerase (PDI)と考えられてきたが、近年20種類以上ものPDIファミリー酵素が存在することが明らかとなってきた1。PDIファミリータンパク質の中でも特にPDIは基質のフォールディング反応の中間状態を認識し、基質に天然型ジスルフィド結合を効率よく導入する優れた酵素である2-4。しかしながらPDIが基質を直接触媒している様子を観察した例はなく、その触媒機構の詳細は依然未解明のままである。そこで高速AFM測定によりPDIを一分子レベルで観測した結果、酸化還元状態に依存したPDIの動的構造の制御機構が明らかとなった。酸化型PDIは還元型に比べドメイン間の揺らぎが大きく、この揺らぎを利用してPDIが基質を捕獲し、天然型ジスルフィド結合を導入することが示唆された。興味深いことに、アンフォールドした様々な基質を添加すると、酸化型PDIは単量体と二量体間で会合・解離を繰り返していることが本観測により初めて示された。さらにcryoEMトモグラフィーにより、PDI二量体のより高分解能な構造を決定しつつあり、本セミナーではPDIが基質をどのように認識するのか議論したい。

 

References
1. Okumura, M., et al Free Radic Biol Med. 83, 314-22 (2015).
2. Kanemura S, Okumura, M., et al J. Biol. Chem. 291, 23952-23964 (2016).
3.*Okumura, M., et al J. Biol. Chem. 289, 27004-27018 (2014).
4. #Kojima, R., #Okumura, M., et al (#contributed equally to this work.) Structure, 22, 431-443 (2014).

 

奥村博士は、今年度「発生医学の研究拠点」事業の共同研究課題に採択されています。
多数のご来聴を歓迎します。

 

連絡先:分子細胞制御分野 小椋 光(内線6578)