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[発生研セミナー]12月14日16:00~基生研 中山潤一先生

2016.12.12 ●セミナー

第287回 発生研セミナー

 

ヘテロクロマチンの形成と維持の分子機構

 

中山 潤一 教授
基礎生物学研究所 クロマチン制御研究部門

 

日時:平成28年12月14日(水)16:00~17:00
場所:発生医学研究所 1階カンファレンス室

 

真核細胞の染色体には、ヘテロクロマチンと呼ばれる高度に凝縮した構造が存在している。この構造は、セントロメアやテロメアなどの染色体機能ドメインの構築に必須なだけでなく、エピジェネティックな遺伝子発現制御にも重要な役割を果たしている。ヘテロクロマチン領域には、ヒストンH3の特徴的なメチル化修飾(H3K9me)が存在し、HP1などのクロマチンタンパク質が結合することで、高次のクロマチン構造が形成されると考えられている。一方、分裂酵母を用いた研究によって、ヘテロクロマチンの形成にRNAサイレンシングの経路が関与することが明らかにされた1)。分裂酵母のChp1は、H3K9meを認識するクロモドメイン(CD)を有し、Argonaute(Ago1)とともにRITS複合体を形成し2)、このRNAサイレンシングの過程で中心的な役割を果たしている 3)。私たちのこれまでの研究によって、Chp1のCDがRNA/DNAに対する結合能を有し、この結合がH3K9meの認識と共役すること、またChp1の機能に必須であることを明らかにした4)。この結果は、進化的に保存されたドメインとして知られるCDが、単にH3K9meの認識ばかりでなく、H3K9meとRNAをクロマチン上でリンクさせる重要な役割を果たすことを強く示唆している。本講演では、ヒストンメチル化修飾の認識とRNA結合の共役についての最近の知見を紹介し、ヘテロクロマチンの形成と維持の分子機構について議論したい。

 

参考文献
1) Volpe et al. Science 297: 1833-1837 (2002)
1) Verdel et al. Science 303: 672-676 (2004)
1) Sadaie et al. EMBO J. 23: 3825-3835 (2004)
1) Ishida et al. Mol Cell 47: 228-241 (2012)

 

中山先生は、平成28年度発生医学研究所共同研究課題に採択されております。

 

連絡先:発生医学研究所 細胞医学分野 斉藤典子 (内線6802)