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分  野細胞識別分野(現・腎臓発生分野)
掲載日2007 年 4月 19日
タイトル
Six1/Six4 二重 ノックアウトマウスで は腎臓が完全に欠損する

Hiroki Kobayashi, Kiyoshi Kawakami, Makoto Asashima and Ryuichi Nishinakamura (2007) Six1 and Six4 are essential for Gdnf expression in the metanephric mesenchyme and ureteric bud formation, while Six1 deficiency alone causes mesonephric tubule defects. Mech. Dev. 124, 290-303.

多くの器官は、間充織と上皮の相互作用によって構築される。無数のネフロンからなる高度に組織化された腎臓も、後腎間充織(間充織)と尿管芽(上皮)の相互作用によって誘導される(図1)。 Six遺伝子ファミリーはショウジョウバエからヒトまで保存された転写因子であり、後腎間充織に発現するSix1はマウス腎発生に必須であることが近年明らかになった。しかし、Six1単独の欠失マウスでは、不完全ながら腎臓が形成される個体も存在しているため、他の遺伝子によってSix1の機能の一部が補われている可能性が考えられていた。細胞識別分野(西中村隆一教授)の小林寛基(大学院博士課程)らは今回、その候補としてSix4を考え、Six1/Six4二重欠失マウス を用いて解析を行った。その結果、Six1/Six4欠失マウスでは腎臓及び尿管が完全に欠損し、尿管原基である尿管芽も全く形成されなかった(図2)。さらに、尿管芽の引寄せに関わる液性因子Gdnfの後腎間充織における発現も完全に消失しており、これらの症状はすべて、Six1欠失マウスと比べて重篤であった。これらの結果より、Six1とSix4は協調的にGdnfの発現を制御することで尿管芽を引寄せ、間充織と上皮の相互作用に関与していることが明らかになった(図1)。この研究成果は、Mechanisms of Development 誌2007年4月号に発表された。

 

np17_1

np17_2

 

図1 . 後腎間充織に発現するGdnfによって尿管芽が引き寄せられる

Six1/Six4は協調的にGdnfの発現を制御している 

図2 . Six1とSix4は協調的に腎発生に関与する

上段: Six1/Six4欠失マウスでは、腎臓及び尿管が完全に欠損する。

ad;副腎、kid;腎臓、ur;尿管

中段: Six1/Six4欠失マウスでは、尿管芽が形成されない。

wd;ウォルフ管、矢印;尿管芽

下段: Six1/Six4欠失マウスでは、Gdnfの発現が完全に消失する。

黄円;ウォルフ管、矢尻;後腎間充織