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第157回(H19.1.10)
 
氏 名

石原 宏 (イシハラ コウ)

 
所 属

熊本大学 発生医学研究センター 器官制御分野 COEリサーチアソシエイト

 
題 目

CTCF依存性インスレーターの機能と分子機構

 
抄 録

 高等生物のゲノムは、様々なレベルの発現制御を受けている。個々の遺伝子ごとの転写調節に加えて、核内配置による制御や染色体全体に及ぶグローバルな制御も受ける。さらに、各々の間期染色体は数 10〜数100 kbのローカルな機能ドメインを形成し、ドメイン内の遺伝子は、エンハンサーやサイレンサー、LCRなどによる高次の遺伝子発現制御を共通に受ける。エンハンサーの作用はドメインを越える範囲にまで及ぶポテンシャルがあるが、実際にはドメイン間に存在するインスレーター配列の機能により、ドメイン内に限定されている。哺乳類ではCTCF (CCCTC-binding factor)と呼ばれる転写因子がインスレーター配列に結合し、その活性に必要であることが知られている。しかし、CTCFがどのように染色体ドメインの形成に働くのか、その結果形成されるクロマチン構造がどのような構造か、その詳細は不明である。今回、我々はインスレーター活性におけるCTCFの役割を明らかにすることを目的に、CTCF結合因子を探索し、新しいCHD (chromodomain helicase)ファミリータンパク質CHD8を同定した。CHD8は細胞核内でCTCFと複合体を形成し、クロマチン上のCTCF結合部位に存在することが示された。さらに、RNAiによるCHD8のノックダウンにより、CTCF依存性インスレーターの活性が阻害された。また、CHD8のノックダウンによりBRCA1とc-myc遺伝子座のCTCF結合部位近傍のDNAメチル化の増加とヒストンのアセチル化の減少が見られた。これらの結果は、CTCF-CHD8複合体がインスレーター部位のエピジェネティックなクロマチン修飾に関与し、CTCF依存性インスレーターはクロマチンリモデリングと密接に関連することを示唆する。
  さらに、我々は新規 CTCF結合配列を同定するため、抗CTCF抗体を用いたChIP-on-Chip解析を行った。その結果、IGF2/H19遺伝子座において新たなインスレーターが同定された。この結果をもとにIGF2/H19遺伝子座の高次クロマチン構造変換による遺伝子制御について考察する。

 
参考文献

1.  Ko Ishihara , Mitsuo Oshimura , and Mitsuyoshi Nakao (2006) CTCF-dependent chromatin insulator is linked to epigenetic remodeling . Mol. Cell 23, 733-742.
2.  石原宏、中尾光善 (2006) クロマチンインスレーターの構造と機能. ゲノムワイドに展開するエピジェネティクス医科学. 実験医学(増刊)24, 63-69.